感動の《ヴェスプロ》!2017年01月22日 00時29分23秒

モンテヴェルディの《ヴェスプロ》(聖母マリアの夕べの祈り)が私の無人島の1曲であることについては、折にふれてお話ししてきました。そのすばらしい新譜が出たことがうれしく、毎日のように聴いて、涙しています。

演奏は、ハリー・クリストファーズ指揮のザ・シックスティーン。2枚組のCDに、「マントヴァのモンテヴェルディ」と題するDVDが付いています。

《ヴェスプロ》が作曲されたのも《オルフェオ》が初演されたのもマントヴァ時代ですが、今までマントヴァをこれほどクローズアップした映像はありませんでした。《ヴェスプロ》がどんな歴史と文化の中で生み出されたのかがよくわかる、貴重にして美麗な映像です(英語だけなのですが、映像と音楽で十分だと思います)。クリストファーズがこの作品に心から感動していることが、いくつかのシーンから伝わってきます。

演奏風景からわかることは、ザ・シックスティーンの主要メンバーがすぐマドリガーレを組み、お互いを聴き合いながら血の通った重唱をできるだけの能力をもっている、ということです。《ヴェスプロ》もこうしたマドリガーレ・ベースで、自発性のある繊細なアンサンブルが展開され、心に染み入る感動を届けてくれます。

時を同じくして、ガーディナーがヴェルサイユ礼拝堂で録画したDVDも発売されました。比べてどうですか、というご質問があるでしょうから、私の個人的な感想を述べておきます。

以前、ガーディナーの《ロ短調ミサ曲》新録音に、えっ、どうしちゃったの、という感想を抱いたことを書きましたね。その後、ライプツィヒで《マタイ受難曲》を演奏者席で聴き、精力的な指揮ぶりに圧倒されたことも書きました。今回の《ヴェスプロ》も、えっ、どうしちゃったの、というのが第一印象。ではガーディナーが精彩を失っているかというと、画面には、音楽のすべてを体現するような精力的な指揮ぶりが映っている。それはまさに、私がライプツィヒで見たものと同じなのです。

私の中では、これで3つがつながりました。個人的な意見ですが、モンテヴェルディ合唱団の水準がかつてほどでなく、それを指導的に引っ張るためにことさら大きな指揮になり、それがかえって、演奏の自発性を失わせているのではないでしょうか。「笛吹けど踊らず」という言葉がありますが、指揮者が振りすぎるのは、古楽ではやはり疑問。私なら、温かく感動のこもったクリストファーズの演奏をお薦めします。

今年のライプツィヒ・バッハ祭2017年01月18日 23時36分01秒

厳しいスケジュールをなんとか乗り切ったところで、今年のライプツィヒ・バッハ祭旅行をご案内します。私の失態が繰り返されてきたこの旅行。行ったらたいへんなことになるぞ、と思われる方がいらしても仕方ないのですが、同行された方とは親しいお付き合いが続いたりもしておりますので、謹んでご案内申し上げます。

今年のプログラムは特別で、どう切り取るか、苦労しました。というのは、モンテヴェルディ生誕450年をライプツィヒの人たちがたいへん重んじているらしく、《オルフェオ》(サバール指揮)、《聖母マリアの夕べの祈り》(ピション指揮)の両名作が、音楽祭の中央に、ドーンと座っているのです。

これをパスしてバッハだけにすることはできませんし、そうしたらかえってつまらない。ということで、今年はこの2曲をメインに、宗教改革にまつわるバッハのカンタータ(ガーディナー指揮)と、聖トーマス教会のメンバーによる《ヨハネ受難曲》(シュヴァルツ指揮)を鑑賞する、というプログラムにしました。《聖母マリアの夕べの祈り》の裏には、アンドラーシュ・シフのバッハ・コンサートがあります。でもそれは日本でも聴けるでしょうから、むしろ今年はモンテヴェルディを聴いていただきたい、というのが私のご提案です(シフに行かれても結構です)。

ツアーには遠足がつきものですね。今年は、それをオプショナル・ツアーとして独立させ、充実させました。2つあります。1つは、ドレスデン近郊のフライベルクにジルバーマン・オルガンを訪ねるもの、もう1つは、バッハの成長の地テューリンゲン(アイゼナハやアルンシュタット)を、ルターの家と併せて訪れるものです。アイゼナハはまだ、という方も案外いらっしゃるのではないかと思い、初めて企画しました。

いつも皆様とビールやワインを飲むのが楽しみですが、宿泊する星5つの「シュタイゲンベルガ-」というホテルには、夜2時までやっているバーがあります。値段もたいへんリーズナブルです。

詳細は、朝日旅行社のホームページをご覧下さい。http://www2.asahiryoko.com/djweb/TourDetail.aspx?tc=S27636170000

ご参加をお待ちしています。

【付記】期間中ライプツィヒでは、朝の礼拝から夜のコンサートまで、至るところにバッハがあります。ですので、自分のアレンジでたくさんのコンサートを聴くことが可能です。わりと高額のコンサートが今注目のアンサンブルであることもあれば、プログラム代だけで聴けるコンサートが大満足、ということもあります。

女性は若い2017年01月12日 22時43分42秒

毎年思うことですが、年末年始というのは、ゆっくりできるという印象のみあって、実際にはすぐ仕事になってしまいますね。年賀状も後追いで、ようやく処理しました。私は原則、返信オンリー。しかし今日も返信を書きました(笑)。

仕事がおしなべて好発進しているのは、年の全体から見て、いいのか悪いのか。でも先を考える余裕はありません。

日本指揮者合唱協会での講演(6日)は、重鎮がずらりと並んだ客席にちょっとびびりましたが、ミサ曲テキストの話に深く入ってきていただき、合唱の世界との距離がいちだんと縮まった、という思いがあります。どこかで食事しようと思っていたら(←懇親会の席では「飲む+話す」のみで、食べない主義)、偶然の流れで、2人の女性とご一緒することになりました。

ここだけの話ですが、お二人とも、私より10歳以上年長でいらっしゃるのですね。でも、活躍しておられる方は、本当にお若い。ついつい昔の感覚で70代、80代と考えてしまいますが、昔と今は、本当に違います。とくに、女性が違うと思います。

朝日カルチャーのオペラ史の講座も好発進しました。《オルフェオ》から入っていますが、モンテヴェルディ熱が再燃しています。皆さんにぜひ見ていただきたいモンテヴェルディ映像があるのですが、新聞に掲載されてから発表します。

最大目標と公言している《ヨハネ受難曲》の研究は、第2稿について、一通りのたたき台を作りました。毎月編集者に渡す日取りを決め、それに向けてがんばるという流れを作っています。編集者様には本当にありがたいサポートで、感謝あるのみです。

明日は授業の後大阪を往復し(《冬の旅》)、土日は埼玉県の合唱コンテストになります。皆様も、よいご週末を。

今月の「古楽の楽しみ」2017年01月07日 07時55分21秒

1月は、宗教改革の記念イヤーにちなんで、ルターのコラール7曲とその編曲でプログラムを組みました。ちょうど、有名コラールを合唱編曲、オルガン編曲をちりばめてメドレー風に編集したCD(M.グリューネルト指揮のドレスデン聖母教会室内合唱団)を入手していましたので、これを活用し、適宜、補っていくという方針を取りました。

9日(月)は、 《異邦人の救い主》と《来たれ聖霊、神なる主よ》です。

〈異邦人の救い主〉は、メドレー(シャイト、プレトリウス、グリム、シャイン、パッヘルベル)と、テキスト全節を用いたベームのカンタータ(ラルフ・ポプケン指揮)、加えて、ブルーンスのコラール幻想曲(オルガン:塚谷水無子)。

《来たれ聖霊、神なる主よ》の方は、メドレーのみとしました。内容はシャイト、ヴァルター、プレトリウス、シュッツ、アムスドルフのオルガン曲・声楽曲です。

10日(火)は、《天にいますわれらの父よ》と、《あなたに賛美あれ、イエス・キリストよ》。

《天にいます》は、メドレー、ハスラーとシャイトのオルガン編曲(ハラルト・フォーゲル演奏)、ブクステフーデのコラール変奏曲(ベルナール・フォクルール)。同じ旋律が、こちらでは《われらより取り去りたまえ》と題されています。

《あなたに賛美あれ、イエス・キリストよ》の方は、メドレーの後に、このコラールに基づくバッハのカンタータ第91番を加えました。演奏はガーディナーです。

11日(水)は、《神はわがやぐら》と、《高い天から》。

《神はわがやぐら》は、メドレーとフランツ・トゥンダーのコンチェルト(=カンタータ)。後者の演奏はヘルマン・マックスです。

《高い天から》は、メドレー+シャイデマンのオルガン編曲(ヨーゼフ・ケレメン演奏)+バッハのカノン風変奏曲。これには、自筆譜バージョンを遣っているジャン=クロード・ツェーンダーの演奏を遣いました。

12日(木)のコラールは、《キリストは死のとりことなられても》のみ。メドレー、ヨハン・ショープのコンチェルト(=カンタータ、演奏はハンブルク・ラーツムジーク)、そしてやはり、バッハのカンタータ第4番を入れました。以前BCJを一度出しましたので、今回はバッハ・プレイヤーズ(2011年録音)です。これもいい演奏だと思います。

最後のコーナーは、宗教改革100年祭(1617年)のために作曲されたアルテンブルクの《ガウディウム・クリスティアーヌム》から、〈ルター派の歓呼の叫び〉〈ルターの預言〉の両楽章。珍しい曲ですが、時代はよく反映されています。演奏は、ズザンネ・ローン。

ずいぶんごちゃごちゃしたご紹介になりました。しかしコラール自体は民衆的で素朴なものですから、軽く楽しんでいただけると思います。どうぞよろしく。

今月のイベント2017年01月04日 22時24分28秒

今年は、宗教改革500周年、モンテヴェルディの生誕450周年ですね。私のイベント、放送も、それらと関わっています。順番にご案内します。

6日(金)、日本合唱指揮者協会の講演で、今年が始まります。コンクールでミサ曲を採り上げる合唱団がとても多いところから、ミサ曲のテキストについて、演奏に役立つ形でご説明しようと思います。

朝日カルチャーセンター新宿校は、イレギュラーな予定になっています(水曜日の出講は変わりません)。11日から、終了したワーグナーに変えて、「オペラ史初めから」という講座を始めます(10:00~12:00)。ここで、モンテヴェルディ・イヤーをフォローしようというわけです。

11日は歌劇《オルフェオ》全3回のその1。会場の都合で、この日はこれのみで、18日が《オルフェオ》その2と、バッハの最新録音紹介講座(13:00~15:00)の継続となります。バッハでは、無伴奏チェロ組曲の第3番を扱います。無伴奏チェロ、新譜のラッシュが続いています。

13日(金)は、いずみホールのシューベルト企画第4回。いよいよ《冬の旅》で、ユリアン・プレガルディエンと鈴木優人さんの顔合わせです。いずみホールのフォルテピアノ(ナネッテ・シュトライヒャー)のコンディションがこのところとても良くなってきているので、ご期待下さい。

私はとんぼ返りで、14~15日と29日、埼玉県合唱コンテストの審査を務めます。

21日(土)は、立川の「楽しいクラシックの会」。30周年のイベントになります。10:00から12:00まではムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフ》について学び、午後は記念パーティという計画です。この日からのご参加も、歓迎いたします。お申し込みは渡辺公子会長までどうぞ(violine@wf6.so-net.ne.jp)。

28日(土)は、朝日カルチャーセンター横浜校のモーツァルト講座です。ウィーン時代のピアノ・コンチェルトに入ります。盛り上がってきている講座なので、伺うのが楽しみです。

放送については別途ご案内いたします。今月は宗教改革の特集です。

おめでとうございます2017年01月02日 22時51分18秒

皆様、明けましておめでとうございます。全国的に好天のようで、つつがないお正月をお迎えの方が多いのではないでしょうか。今年もよろしくお願いします。

駅伝も見ましたが、今年の初体験と言えるのは、歌舞伎中継でした。歌舞伎座の『松浦の太鼓」です。有名な出し物なのでしょうが、私は不案内。昔から俳句が好き、中でも宝井其角は結構好きなので、その其角が舞台に登場し、彼の句に赤穂浪士の付けた七七の解釈をめぐってストーリーが進んでいることに興味を持ちました。

いやあ、迫真のドラマになっている上に主演・染五郎の華が並々でなく、歌舞伎のすばらしさを満喫しました。伝統芸能に、もっともっと親しみたいと思います。

今年の目標は、たった一つ。《ヨハネ受難曲》の論文を完成させることです。専門的な論文を書き、そこから一般書を作る二段構えにしましたので、第一優先でこれに取り組みます。新年早々、気持ちの焦りを感じています。

変わらぬお付き合いのほど、心からお願い申し上げます。

2016年を送る2016年12月30日 23時11分26秒

今まだ、30日です。皆様には今年もお世話になり、ありがとうございました。恒例の1年のまとめをしますが、ダブルブッキングを何回とかそういうことではなく、来年に向けて前向きに総括させていただきます。

今年は、(1)途中から年齢が大台に乗りました。未知の世界に踏み込む不安がありましたが、昔予想したように般若心経を筆写して心を清めるという人生には、まったくなりませんでした。定年後5年にして、今年が一番仕事をしたという実感があります。(2)体調が落ち込まず、人間ドック、ペット検診もクリアできたためでしょう。ワインも相変わらず飲んでいます。

(3)出した本はありませんが、自分としては勉強も、今年が一番したと感じています。周辺的なものがそぎ落とされ、勉強に集中性が出てきたように自分では思います。対象の一角が神学であるのは、《ヨハネ受難曲》の研究を、いま最大の課題としているからです。

(4)講演、カルチャーなどの仕事は、2:1ぐらいでモーツァルトが多かったです。28日の仕事納めも、モーツァルトでした。今年は交響曲の研究から、とくに得るものがありました。

(5)いま3つの大学に出講していますが、すべて、今年度で終わりになります。聖心女子大と國學院はあと2回、ICUは第3学期担当なのであと8回あります。大学もカルチャーも、すべてしっかり準備し、詳細なレジュメを配布して行えたのは良かったなあ、と思っています。専任の雑用がなくなったからこそ、できることです。

(6)去年から会長を務めている藝術学関連学会連合では、6月に最初のシンポジウムを催しました。国や関連団体の文化関係の仕事にも、見えないところで時間を使っています。

(7)合唱の分野とのかかわりもいろいろな形で続いていますが、4日間を費やした福島のコンテスト審査は、とりわけ印象深いものでした。まこと至りませんが、合唱とのお付き合いは続けることになりそうです。

(8)6月のライプツィヒ・バッハ祭に今年も行きました。その大きな楽しみは、人の輪の広がりです。旅行のみならず、今年はとくに出会いが多く、それ以上に、意味深い再会を多く経験しました。これはぜひ、(9)とさせてください。

連続しているものを、(10)にまとめざるを得ません。いずみホールのスタッフは、皆様にご支援をいただいてたいへん力をつけてきており、今進行中のシューベルト企画に、それが反映されていると思います。引き続き、よろしくお願いします。また、サントリー芸術財団の仕事で現代音楽に接してきたことは、私の大きな財産になっています。以前と違う理解を、自分の中に感じるからです。NHK「「古楽の楽しみ」のスタッフ、楽しいクラシックの会、すざかバッハの会など、お世話になった方々に、心から御礼申し上げます。

皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

懇親会第二弾2016年12月28日 10時30分39秒

近況報告の続きです。

18日(日)は、長野駅構内にある「長野長寿食堂」でめでたく始まり、「すざかバッハの会」へ。これについては、近々ホームページができると思いますので、そのときにご案内します。

19日(月)、20日(火)は、大学の授業のあと会議へ。話は、21日(水)に移ります。この日は、朝日カルチャーセンター新宿校のバッハ講座の本年最終回でした。

先日、横浜のモーツァルト講座で懇親会を催したお話をしました。公表した以上、新宿でもやるべきだと思い、先回の新宿講座で、やりたいと思います、と意思表示したのです。同じビルに適切な場所がないかどうかあたってみたが見あたらない状況だ、ということもお話ししました。

横浜の話は受講生から出てきたことですが、こちらは、私からのご提案。皆さんがどのぐらい賛同してくださるか、わかりません。ですので、それはいい、楽しみにしています、というような声かけを期待していました。

ところが、声をかけてくださる方はどなたもなく、皆さん、硬い表情(?)でお帰りになってしまったではありませんか。私の方は振り上げた拳の下ろしどころがなくなり、ここは、あきらめることにしました。

で、21日の講座にあきらめる旨を申し上げたところ、場がざわつきます。今日あると思っていた、という人もあれば、わざわざ時間を作った、という人も出てたのです。そこで急遽、カルチャーの担当者に場所を探していただき、隣のハイアット・リージェンシーのロビーで、横浜と同数の懇親会が実現しました(汗)。

新宿は月2回ですし、古い方もいらっしゃいます。それだけに、本当にやってよかった、というのが実感。ただロビーでは離れたところとの会話がむずかしく、カラオケの密室で開催した横浜の効果を、あらためて確認しました。

24日(土)に、横浜の講座がありました。雰囲気が一変し、なごやかかつ、生き生き。やっぱり人のつながりが、一番大事ですね。

今月のCD2016年12月27日 10時50分25秒

今月の新譜は、どうしたものか、ロシアものに集中した印象です。「たのくら」でやっているムソルグスキーの《ボリス・ゴドゥノフ》に、なつかしいNHKスラヴ・オペラの録音(マタチッチ指揮)が出ましたし、ゲルギエフのプロコフィエフ・シリーズ(ピアノ協奏曲第4番、第5番、交響曲第4番、第6番、第7番)も、まとめてきくと変遷がよくわかります。

でも今月はやはり、チャイコフスキーでしょう。ユロフスキ指揮、ロンドン・フィルのライヴ(エイベックス)で、久しぶりに後期三大交響曲を楽しみました。軽めの音作りですが、爽やかではつらつとしています。曲として私が好きなのは、第5番。演奏としては、《悲愴》がとりわけいいように思いました。

で、特選盤は、リサ・バティアシュヴィリのヴァイオリン、バレンボイム指揮 シュターツカペレ・ベルリンによる、チャイコフスキーとシベリウスのヴァイオリン協奏曲です。

ヴァイオリンは幅の広い楽器ですが、バレンボイムはバティアシュヴィリの趣味の良さに惚れ込んで起用しているらしく、繊細さは特筆もの。独走したくなる曲を独走せず、オーケストラをしっかり聴きながら溶け込み、アンサンブルを作っていく配慮が、演奏を格調高いものにしています。大好きなシベリウスのコンチェルトとの組み合わせは何より。

ロマンティスト2016年12月25日 22時02分07秒

「ホールを奏でる」という形でお示しした価値観について、補足しておきます。

演奏が聴衆に響きを届けて成り立つものであるとすれば、音響体としてのホールを味方につけることが、演奏家には大きなアドバンテージになると思います。ホールの響きを体感することで、演奏家と聴き手が一つに結ばれるからです。

でも演奏家には、それを大切にしている人と、あまり関心をもたない人がいるように思うのですね。2000人のホールでも200人のホールでもまったく同じに演奏する人が、案外少なくないように思えるのです。これは損だというのが、私の意見です。

さて、大阪から名古屋まで戻ってきた、先週の金曜日。朝6時に起きて新幹線に乗ろうとタイマーをかけましたが、乗り遅れたらたいへんだ、タイマーは鳴らない可能性もあるぞ、と思ったらと気が気ではなくなり、結局、まんじりともせずに朝を迎えました。

ホテルを出、余裕をもって名古屋駅に向かいました。ところが駅は人であふれ、6時台の東京行き普通車が、全部満席なのです。旅慣れない家族連れが長蛇の列をなしていてなかなか新幹線エリアに入れず、危ないところでした。こういう中継ぎは、やらない方がいいようです。

10時からの「たのくら」を立川で終えると、さすがに疲労を実感。会食をパスして家で休み、多少の準備をしてから、夜のレクチャーコンサートに臨みました。朝日カルチャー新宿校の音楽室で、敬愛するピアニスト安井耕一さんと、音楽におけるロマンについて語り合おう、というのです。

旧同僚の安井さんを私はロマンティシズムの権化のように思ってきたのですが、ご本人は、いや、自分は職人だ、とおっしゃいます。そこで、安井さんがロマンティストか職人か、という見極めをサブテーマに設定し、コンサートを進行させることにしました。

最初緊張しているようにも見えた安井さんですが、持ち前の音楽に対する愛は抑えるべくもなく、シューベルトに、シューマンに、ブラームスに、ロマンの溢れる会になりました。それが濃厚でも主観的でもなく、透明な響きの中でおおらかに立ち上がるのが、安井さんの職人芸です。

終了後はご夫妻と、ネットで探しておいたお店へ。風俗街のど真ん中を通ることになって肝を冷やしましたが(通らずにも行けます)、ようやく新宿に、おいしく雰囲気もよくて話しやすい、とてもいいお店を見つけることができました。いずれご紹介します。

盛り上がった会話の中で、そういう先生こそロマンティストではないか、という反撃が・・・。どうなんでしょうね(笑)。