最新・最後の『モーツァルト』2014年06月06日 11時50分11秒

6月10日発売のちくま学芸文庫『モーツァルト』の見本が上がってきました。

昨年6月にお話をいただいたときのご提案は、私が2000年に講談社から出版した『モーツァルト/2つの顔』を文庫化したい、というものでした。ありがたいお話と思いつつさて旧著を見直すと、いろいろな問題点が目につきます。そこで一定の猶予をいただき、抜本的に書き直すことにしました。

冒頭の「生涯」と、最後の「モーツァルトを知るための15曲」が、まったく新しい書き下ろしです。最後期を扱った第2~4章も、現在の考えに基づいて、原型をとどめぬほど書き直しました。これらを合わせて、全ページの半分ちょっと。残りの章、すなわち伝記論、作品目録論、歌曲論、オペラ論、交響曲論、バッハとの比較論もかなり直しましたので、自分としては、新しい本として読んでいただければ、という気持ちです。

モーツァルトの最後の時期に関しては、百家争鳴というよりも新旧激突というような見解の対立があり、私自身、立ち位置を決めかねていました。しかしヴォルフ先生の近著(目下翻訳中)を読み、なるほどそう考えるとすべてを整合的に理解できるな、と膝を打つ視点があることに気づいたのです。そこで、そうした視点のもとに、生涯と作品、とくに後期に対して根本的に見直しをかけた結果が、本書です。

十数冊の本をこれまで出版してきましたが、編集者が女性というのは、今回が初めてでした。その編集者、平野洋子さんには、共感と感動をもってサポートしていただき、かぎりない励みになりました。次の写真は、見本をご持参いただいたときのものです。モーツァルトの本はおそらくこれが最後になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。