今月の「古楽の楽しみ」2017年10月18日 23時17分20秒

やっと録音を済ませたところです。今月の出番は最後の週で、パーセルを特集します。パーセル特集は2回目。極力新録音、というポリシーを守りました。全4回です。

10月30日(月)は、セミ・オペラ《アーサー王》の抜粋。演奏はフレデリック・ショーヴェ指揮、バロックオペラ・アムステルダムの2012年の録音です。バロックオペラを謳うだけあり、雰囲気のある、いい演奏です。

31日(火)は、ジャンルを超えたプログラムです。まず聖セシリア日のためのオード《ようこそ、あらゆる楽しみよ》(第1作)を、デュメストルの2016年最新録音で。次にザ・シックスティーンの2016年最新録音から、重唱曲、キャッチ、チェンバロ曲、アンセムの、とても気の利いた配列部分を切り出しました。最後は、名作とされるアンセム《心に湧き出る美しい言葉》を、シャンティクリアの演奏で。

11月1日(水)は、劇音楽にフォーカスしました。ホグウッド指揮の《アブデラゼル》組曲から入り、トリオ・ソナタとチェンバロの組曲を混ぜながら、アンドレアス・ショルのカウンターテナーによる歌を3曲。最後を《ほどかれたゴルディウスの結び目》組曲で結びました。ショルのCDに入っている、アカデミア・ビザンチナの演奏です。

2日(木)は、セミ・オペラに戻り、パーセルの遺作《インドの女王》(未完)を、ザ・シックスティーンの2014年の録音から抜粋しました(短いのでほとんど全部です)。

あらためて、パーセルの音楽の美しさを満喫。いままでセミ・オペラはみんな同じようなものに感じていましたが、今回ストーリーと突き合わせて調べ、特徴がよくわかりました。《アーサー王》と《インドの女王》、どちらも感服の名曲です。お楽しみください。

今月の「古楽の楽しみ」2017年09月23日 07時45分52秒

今月は、最後の週が出番になります。遅くなりましたが、ご案内します。

今月は原点に戻って、「ドイツ・バロックの5人」という企画を作りました。二番手クラス、しかしとても個性的で面白い作曲家を選び、新たに手に入れたCDを最低1枚ずつ使いながら構成しました。

25日(月)は、ミヒャエル・プレトリウスです。放送を重ねるにつれ、このシュッツ以前の作曲家のスケールの大きさが痛感されているものですから、晩年の曲集《ポリュヒュムニア》のコラール・コンチェルトを中心に、合唱曲、オルガン曲を集めました。《テルプシコーレ》からも少し入れています。

26日(火)は、ヨハン・ヘルマン・シャイン。3Sの一人でバッハの1世紀前のトーマス・カントルですが、この人の音楽はとても情感があって、近代的なのですね。宗教曲、器楽曲、世俗曲をちりばめました。自分で詩も書く世俗曲の才気は、なかなか。しかも早死にした人らしい陰影が、音楽のあるのです。

27日(水)は、ヨハン・ローゼンミュラー。今年ライプツィヒで生誕400年を祝われた作曲家ですが、ヴェネツィアに移り住んで成功した人だけに、その世界は、まぎれもなくイタリア。聴き映えがします。アマンディーヌ・ベイエとリ・インコーニティのすてきなCDから、いくつか紹介します。

28日(木)は、ディートリヒ・ブクステフーデ。オルガン曲とカンタータで構成しましたが、コレギウム・アド・モザムというロッテルダムのアンサンブルのカンタータが、ノリノリで面白いです。

29日(金)は、クリストフ・グラウプナー。上の4人が全部17世紀なので、次にグラウプナーが来ると、18世紀の音楽がいかに明るくなったかがわかります。管弦楽組曲、カンタータ、フルート・ソナタを並べてみました。テレマンとじつにいい勝負だと感じます。

以上、お楽しみいただければ幸いです。

アンコール放送やります2017年08月12日 23時18分48秒

カンタータ・シリーズが終わったところですが、今月末に、アンコール放送があります。皆さん定期的にアンコール放送をされていると思いますが、私は新企画続きの巡り合わせになり、久しぶりです。

去年の企画からということで、ジャンル特集かバッハのモテット特集のどちらかと考え、ジャンル特集にしました。カンタータの次がモテットじゃ偏りますよね。ジャンルも、舞曲特集でシャコンヌをだいぶ出したばかりですが、気軽に聞いていただけると思います。

8月25日(月)がパッサカリア(とシャコンヌ)、26日(火)がトッカータ、27日(水)がフーガ、28日(木)がファンタジーの特集です。去年の6月に放送しました。どうぞよろしく。

そうそう、フェイスブックについてお詫びしておきます。三角の居酒屋「くや」さんにメッセージをお送りするため、いったんフェイスブックにエントリーしましたが、結局、何もしないまま退会しました。入るのは簡単でしたが、やめるのはとても面倒だということがわかりました。

そんなことですので、フェイスブックの楽しさとか、便利さは味わわないままでした。しかし、これ以上そこに時間は割けない、と判断しました。コンタクトしてくださる方もおられたのですが、お返事もせず、たいへん失礼しました。

8月の「古楽の楽しみ」2017年08月04日 22時54分25秒

バッハのカンタータは結構やっているようですが、まだ半分に達していません。そこで今月は、「ヨハネ福音書とかかわるバッハのカンタータ」という特集を組みました。『ヨハネ福音書』をいま研究していますので、そのカンタータとの関係を調べてみたかった、という事情もあります。

「ヨハネ福音書とかかわる」ということの意味は、『ヨハネ福音書』の一節が朗読される礼拝で演奏されたバッハのカンタータ、という意味です。曲にもよりますが両者には密接な関係があり、直接の引用があることもしばしばです。「ヨハネとかかわる」曲は、案外やっていないこともわかりました。ほとんどの曲が初放送です。

7日(月):福音書第1章(ロゴス讃歌)とかかわるもの。第64番(ベルダー)、第132番(ルッツ)+第147番のアリアとコラール(ガーディナー旧盤。新盤にしようと思ったら、持ち込んだCDに傷がついていて、変更のやむなきに至りました)。

8日(火):福音書第2章(カナの婚礼)とかかわるもの。第155番(ガーディナー)、第3番(BCJ)、《オルガン小曲集》から8曲(椎名雄一郎の最新録音)。

9日(水):福音書第3章とかかわるもの:第129番(ルッツ)、第165番(ガーディナー)、第176番(ヘレヴェッヘ)、オルガン曲《ファッシュによるトリオ》BWV585からアレグロ(プレストン)。

10日(木):福音書第10章、第14章、第15章とかかわるもの。第85番、第59番、第183番。いずれもBCJ。オルガンの聖霊降臨祭コラールBWV651(松居直美)。

11日(金):福音書第16章とかかわるもの:第166番(ルッツ)、第103番(ガーディナー)、第86番(コープマン)。

聖書の話が多くなるのもどうかなと危惧も覚えましたが、カンタータの鑑賞ためには必要と割り切りました。11日の最後に、4つの福音書とかかわるバッハのカンタータの数の統計を発表しています。おそらく皆様の予想と違う結果だと思うので、どうぞお聴きください。

今月の「古楽の楽しみ」2017年07月08日 00時34分15秒

 今月は、中世からバロックまでの「舞曲の歴史」に挑戦しました。たくさんCDを集め、手間だけはかけましたので、楽しんでいただけるといいなあ、と思います。以下、概要を。

10日(月) 中世
 「十字軍の音楽」(マンロウ)、「パリの学徒たち」(ジル・バンショワ・アンサンブル)、「中世イタリアの舞曲」(アニマ・ムンディ・コンソート)、「フェラーラの宮廷音楽」(バーゼル・スコラ・カントールム)のCDその他から、エスタンピ、サルタレッロなどの舞曲を、歌も交えて集めました。

11日(火) ルネサンス
 アテニャン出版の曲集に含まれるバス・ダンス、アルマンド、パヴァーヌ、ブランルといった定番もの(ドゥース・メモワール、ピッファロ)に加えて、マイネリオのバッロ(ムジカ・アンティクア)、ミランとカベソンのスペインもの(カペッラ・デ・ミニストレールス)、ホルボーンによるイギリスもの(カペッラ・デル・トッレ)を集めました。

12日(水) 17世紀(1)
 ダウランドのリュート曲から憂いを帯びた3曲(ラゴスニック、キルヒホーフ)、プレトリウスの《テルプシコーレ》から陽気な10曲(フラウタンド・ケルン)、そして、あの「夜の王のバレ」から、第1の刻の抜粋と太陽王登場の〈グラン・バレ〉(ドセ)。お聴き逃しなくどうぞ。

13日(木) 17世紀(2)
 ステージの舞曲を集めました。まずカヴァッリの歌劇《カリスト》から、序曲と第1幕、第3幕終わりの踊り場面(ヤーコプス)。それからいよいよリュリで、コメディ=バレ《恋は医者》抜粋(ミンコフスキ)と、歌劇(抒情悲劇)《アティス》のプロローグ(クリスティ)、《ファエトン》のシャコンヌ(ミンコフスキ)。全身フランス・モードに染まってしまい、終日へ。

14日(金) 17世紀(3)~18世紀
 リュリ《アルミード》の〈パッサカリア〉は外せませんから、これ(クリスティ)を聴いてから、ポスト・リュリへ。まず、シャルパンティエ《メデ》第2幕のディヴェルティスマン(クリスティ)。次にカンプラのオペラ=バレ《ヴェネツィアの祭》から小さい曲を2つはさんで(ルセ)、最後を、ラモーのオペラ=バレ《みやびなインドの国々》第4幕第6場(クリスティ)で締めました。

 踊りなど全然できない私ですが、数日、頭の中でシャコンヌとパッサカリアが回っていました。気持ちいいですよ!

今月の「古楽の楽しみ」2017年06月09日 00時43分30秒

今日(8日、木)は、番組後半の収録日でした。昨日の打ち合わせで時間調整のためヘンデルを1曲増やすことになり、CDを持参することにしていました(ふつう、前もって郵送しておきます)。

ところが、旅行前であちこち気が行っているせいか、けろっと忘れてしまったのです。立ち往生しましたが、幸い私が大量に使う輸入盤ではなかったため、NHKのライブラリで見つかり、事なきを得ました。形が決まりましたのでご案内します。今月は、4月にやった聖母マリア特集の、続編です。

12日(月):前回たどり着いた17世紀初頭のイタリアから、出発することにしました。中では修道女作曲家、コッツォラーニの作品がなかなかの聴きもので、カリッシミもさすがにいい曲です。
 ・ジェズアルド《アヴェ・レジーナ・チェロールム》 マリアン・コンソート
 ・G.P.チーマ《教会コンチェルト集》より 2声のソナタ、《マリアは天に昇られた》 ドルチ指揮 ムジカ・フィオリータ
 ・グランディ《おお、お前はなんと美しい》 へミントン・ジョーンズ(ソプラノ)他
 ・コッツォラーニ マニフィカト、ディアローグ《なんと惨めなことか》 ブラチュケ指揮 オルランド・ディ・ラッソ・アンサンブル
 ・A..チーマ 4声のソナタ ムジカ・フィオリータ
 ・カリッシミ 《ローマのアリオン》からモテット2曲 コルッソ指揮 センチェントノヴェチェント

13日(火):16世紀スペインと、17世紀フランスの特集です。光り輝くようなイメージの曲が多いですが、最後のシャルパンティエが、録音していてとりわけ感動的でした。
 ・ゲレーロ 《めでたし、いとも聖なる乙女》 マリアン・コンソート
 ・セバーリョス 《おお、祝福された乙女》 同
 ・ビクトリア 《めでたし、海の星》 ザ・シックスティーン
 ・デュモン 《おお、いとも甘美な》 ドセ
 ・シャルパンティエ 《聖母マリアへのリタニア》 クリスティ

14日(水):イタリア18世紀に入ると、がらりと雰囲気が変わります。にぎやかな人間の世界に降りていく、という感じです。
 ・アレッサンドロ・スカルラッティ 《サルヴェ・レジーナ》 ハジェット
 ・ヴィヴァルディ 《サルヴェ・レジーナ》 レーヌ(CT)
 ・ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲《聖母マリアのいとも聖なる被昇天のために》 ビオンディ
 ・フックス 《スターバト・マーテル》 ドゥフトシュミット

15日(木):イギリスの15世紀は前回何曲かやりましたが、16世紀の宗教改革以降は、聖母マリア作品は少なくなりますね。結局、ヘンデルのイタリア時代の作品が中心になりました。
 ・タリス 《見よ、奇跡を》 クレオベリー
 ・パーソンズ 《アヴェ・マリア》 マリアン・コンソート
 ・ヘンデル 《天で輝く聖母よ》 フォン・オッター(Ms)
 ・ヘンデル 《これぞ乙女たちの女王》 カークビー(S)

16日(金):宗教改革後のドイツにマリア関連の音楽を探す、という趣旨で選曲しましたが、意外にいい曲が揃いました。ご注目ください。
 ・ヒエロニムス・プレトリウス 《お立ち、急ぎなさい、私の恋人よ》 エラス=カサド
 ・シュッツ 《おお、お前はなんと美しい》 アルテ・ムジーク・ドレスデン
 ・ミヒャエル・プレトリウス 《ドイツ語マニフィカト》 ヘルガート
 ・バッハ カンタータ第10番(ドイツ語マニフィカト) コープマン
 
いろいろ勉強し、聖母マリアをめぐる音楽の歴史的な厚み、高みが本当によくわかりました。よろしくお願いします。

今月の「古楽の楽しみ」2017年05月10日 09時45分38秒

「聖母マリアの音楽」は6月に続編をやりますが、5月は軽く中継ぎということで、バッハの鍵盤楽曲を特集しました。まだ一度も出したことのない曲がたくさんありますので、そうした曲が中心となっています。チェンバロとピアノを取り混ぜる、できるだけ新録音を多くする、という方針は、いつもの通りです。

15日(月):
 2声インヴェンションBWV772~789 シャオ・メイ(ピアノ)
 3声シンフォニアBWV790~801 トーマス・ラゴスニク(チェンバロ)
(いずれも2015年の最新録音です。少し弦楽器で演奏したものも入れたかったのですが、全曲2つで、時間がぴったりでした。)

16日(火):
 2声インヴェンションBWV772~789 リリアーナ・スタヴァルツ(チェンバロ)
 3声シンフォニアBWV790~801 ティル・フェルナー(ピアノ)
(演奏のコンセプトも異なりますから、ピアノとチェンバロを入れ替えて聴く日を2日目としました。録音は2011年、2007年です。お好みでどうぞ)

17日(水):
 プレリュードとフーガイ短調BWV894 リチャード・エガー(チェンバロ)
 トッカータホ短調BWV914 同(チェンバロ)
 トッカータハ短調BWV911 レミ・ジュニエ(ピアノ)
 トッカータト長調BWV916 アンドレアス・シュタイアー(チェンバロ)
 6つの小プレリュードBWV933-938 カール=アンドレアス・コリー(ピアノ)
(初期作品から、3つのトッカータの華々しい競演となりました。チェンバロの両巨匠はもちろん立派ですが、超新人のジュニエの22歳/2014年録音がめざましく、金曜日に特別コーナーを設けることに。)

18日(木):
 チェンバロ協奏曲ニ長調BWV972(原作:ヴィヴァルディ) ヴィタール・ユリアン・フレイ(フライ?)(チェンバロ)
 チェンバロ協奏曲ニ短調BWV974(原作:A.マルチェッロ) アンドレア・バッケッティ(ピアノ)
 チェンバロ協奏曲ハ短調BWV981(原作:B.マルチェッロ) オリヴィエ・カヴェー(ピアノ)
 ソナタイ短調BWV965(原作:ラインケン) アンドレアス・シュタイアー(チェンバロ)
(バッハのコンチェルト編曲はオルガン用もありますが、チェンバロ用の方が多数です。イタリアの、明るい風が吹きます。)

19日(金):
 イタリア風アリアと変奏BWV989 アンドレア・バッケッティ(ピアノ)
 ファンタジーとフーガイ短調BWV945 ピエール・アンタイ(チェンバロ)
 アルビノーニの主題によるフーガロ短調BWV951 同
 〔特設コーナー〕
 旅立つ最愛の兄に思いを寄せるカプリッチョBWV992 レミ・ジュニエ(ピアノ)
(作品目録鍵盤部門の終わりの方に並ぶ曲が中心ですが、案外楽しんでいただけると思います。最後に、すでに放送した曲であるおなじみのカプリッチョを、ジュニエへのアンコールという形で入れました。BWV945は、プレハッチの新譜にも入っていることに気づきました。ブレハッチのアルバムからは、12月の新譜紹介のさいに何か入れるつもりです。)

4月の「古楽の楽しみ」~聖母マリアの音楽2017年04月08日 09時56分41秒

「古楽の楽しみ」、今月は17日(月)からです。新年度は金曜日が入る計5日の特集になりましたので、かねてからやりたかった、「聖母マリアの音楽」を特集しました。時間と経費をたっぷりかけて準備し、多彩なプログラムを作りました。思い入れという点では、過去7年余で随一です。

17日(月) マリアと中世
 古代ギリシャ賛歌、グレゴリオ聖歌、中世オルガヌム、いくつかの写本(カルミナ・ブラーナ、聖母マリアのカンティガ集、ラス・ウェルガス写本、モンセラートの朱い本)から。

18日(火) マリアとルネサンス
 ダンスタブルとデュファイの「御母」つながりのモテット、マリアに献げるオルガン曲、「アヴェ・マリア」の聴き比べ(グレゴリオ聖歌、ジョスカン・デ・プレ、ウィリアム・コーニッシュ、オケゲム、ヴィラールト)。カンツォーナを1曲はさんで、パレストリーナとラッソの競演。後者がまたアヴェ・マリアになります。演奏はシャンティクリア、ヒリヤード、タリス・スコラーズ、PCAなど。

19日(水) マリアと雅歌
 旧約聖書『雅歌』のテキストによる、乙女マリアの音楽。いくつかのテキストに焦点をあて、パレストリーナ、ラッソ、レヒナー、ビクトリア、そしてモンテヴェルディを比較します。モンテヴェルディは《ヴェスプロ》から3曲入れましたが、先般ご紹介したザ・シックスティーンの演奏を使いました。

20日(木) 「海の星」のマリア
 絶美のイムヌス、《めでたし海の星Ave maris stella》の大特集です。グレゴリオ聖歌で開始し、作曲者不肖の13世紀モテット、ダンスタブル、デュファイ、ジョスカン、モンテヴェルディと来て、《ヴェスプロ》の〈聖マリアによるソナタ〉をはさみ、カヴァッリで締めくくりました。もとの聖歌がすばらしすぎるためか、聖歌に基づく曲が多い反面、そこから離れた新作は少ないと気づきました。その例外が、カヴァッリです。

21日(金) マニフィカトのマリア
 「マニフィカト」は『ルカ福音書』の伝えるマリア自身の歌ですから、最後はどうしてもこれになります。グレゴリオ聖歌の後、伝デュファイ、クロード・ル・ジューヌ、ジョヴァンニ・ガブリエーリ(12声)、モンテヴェルディ(7声)の4曲を紹介しました。

古い音楽の良さを痛感する作業過程でした。あえて言えば、月曜日には新鮮な驚きが、水曜日には官能の魅力が、木曜日には美の真髄があると思います。火曜日と金曜日は、王道を行くものです。どうぞよろしく。

今月の「古楽の楽しみ」--バッハ2017年03月16日 07時33分15秒

1月、2月と宗教改革を特集してきましたが、3月はその仕上げで、バッハのカンタータです。宗教改革、およびルターとかかわるカンタータを、オルガン曲を交えて採り上げます。主要作品は、次のとおりです。

第1日(20日、月):宗教改革記念日(10月31日)のためのカンタータ。
・第79番《主なる神は日なり、盾なり》 レオンハルト指揮(全集から)
・第192番《いざやもろびと、神に感謝せよ》 ビラー指揮

第2日(21日、火):ルター・コラールによるコラール・カンタータ。
・第2番《ああ神よ、天からご覧下さい》 シュペーリング指揮
・第14番《神がこの時にわれらと共におられないなら》 同

第3日(22日、水):ルター・コラールによるコラール・カンタータ。
・第38番《深い悩みの淵より》 ウィルソン指揮
・第126番《主よ、われらを御言葉のもとに》 ガーディナー指揮

第4日(23日、木):ルター・コラールが複数楽章で登場するカンタータ。
・第36番《喜び勇んで羽ばたき昇れ》 ルッツ指揮
・第76番《天は神の栄光を語り》第2部 アーノンクール指揮(全集から)

オルガン曲はカンタータで使われているコラールにちなむものを挟んでゆきます。他に、プレリュードとフーガホ短調BWV548(第1日)とトリオ・ソナタ第4番ホ短調(第3日に第2楽章、第4日に第1・第3楽章)を、モード・グラットンの演奏で使います。これは、要注目です。

今回の感想。バッハの音楽に聖俗の差はない、というのが通念で私もそう申し上げていますが、違いもやっぱりありますね。世俗カンタータからのパロディである第36番の快活さは特筆もので、今回集めた古風なルター・カンタータの中では飛び抜けた印象があります。ともあれ、どうぞよろしく。

今月の「古楽の楽しみ」--シュッツ(日にち修正済み)2017年02月03日 00時31分46秒

宗教改革特集で開始された、私担当の「古楽の楽しみ」。2月はその続編で、シュッツです。コラールとその編曲という庶民路線で始まった、ルター派地域の音楽。そこに芸術的な高踏性をもたせたシュッツは、初期バロックの偉大な存在です。

シュッツの特集は4年ぶりですが、今回は、前回とダブらないプログラムを基本にしました。シュッツの作品はすべて声楽ですから、一息ついていただくべく、シャインとシャイトの器楽曲を含めました。したがって、初期バロック「3S」の特集としても聴いていただけます。

第1日(13日、月)は、《ダビデ詩篇曲集》から3曲(ラーデマン)と、《小宗教コンチェルト集Kleine Geistliche Konzerte》の、第1巻から3曲、第2巻から2曲。前者はレミー指揮、ミールツ他の新しい演奏ですが、第2巻には1960年代のマウエルスベルガーの演奏を使ってみました。ソロがシュライヤーとアダムで、両大歌手がシュッツを基礎にして出発していたことがよくわかります。小編成の渋い曲を、じつに粛々と演奏しているのです。

第2日(14日、火)は、《シンフォニエ・サクレ》全3巻から抜粋しました。器楽の華やかな、カンタータ風の音楽です。演奏は第1巻がウィルソン、第2巻がメッソーリ、第3巻がユングヘーネルです。一番聴きやすい日だと思います。

第3日(15日、水)は、最高傑作と言ってもいいであろう《宗教合唱曲集Geistliche Chormusik》と、晩年の作品。演奏はラーデマンで進め、最後の《マニフィカト》を、クイケンで出します。

第4日(16日、木)は、未使用素材という枠を外し、シュッツ入門には最適の《十字架上の七つの言葉》で開始しました。今回の演奏は、ユルゲンス指揮の歴史的名盤です。イエスのエグモントと、オルガンのレオンハルトがすばらしいです。

シュッツは、気に入った聖書の歌詞を何度も作曲する傾向があります。マニフィカトもそうでうが、シメオン賛歌〈主よ、いまこそ私を〉も、劣らずです。これを3曲聴き、《音楽による葬儀》の同曲で、締めくくることにしました。そこではこのテキストが、シュッツの好きなもう一つのテキスト、「死者は幸いである」と結びつくのです。演奏は、ザ・シックスティーンです。

最終形を獲得するまで、かなりの試行錯誤を強いられる企画になりました。今回、4回のうち2回を新人ディレクターが担当したのですが、彼女がニュー・グローヴのシュッツ項目をコピーし、カラー・マーカーでびっしり勉強しているのを見て驚嘆。努力は人生で一番大切なものだと思いますし、けっして嘘をつかないものです。すばらしい戦力を得て、いい番組を作りたい気持ちがますます強くなりました。